「何故だ? 何故あのパン工場の主人だけは《流れ星》の影響を受けない?」
科学者が窓から覗き込む中、主人はかまどから焼き上がったパンを取り出す。
サッカーボールほどか……。同じ大きさ、同じ形に整えられたパンには、表面に緩やかな隆起があるようだ。
真ん中のひとつは赤く、両脇の隆起はそれよりも薄い色がついている。
「あれは……」
科学者が、その形を認識するよりも早く、背筋に冷たさが走る。
そう、俺は《あれが何の形なのかを知っている。》
主人が手に取ったパンのひとつと目が合う。
「目が……合う? だと?」
驚く姿が見えているのか定かではないが、そのパンは確かに、科学者に笑顔を投げかけてきた。
「ヒト……!」
@Bernie_Nihei 脱線ほど頭の回るものは無いですよねw